2010年10月14日木曜日

就職ガイダンス講演 テーマ『自分就活』

テーマ『自分就活』

1.就活はあなたのもの

a.就活はあなたのもの。マナーはあるがルールはない。やり方に正解はない。

b.ケース
・3日で4人の社長と会い、3社から内定して1週間で就活を終了した、関西の人気就職コンサルタント。
・学生結婚。憧れのマスコミ就職を4年生の年明けに諦め、3月に内定した人気キャリアコンサルタント。
・100人の社会人訪問をしたA君の作戦は「OB訪問したら、イケてる社会人を毎回紹介してもらう」。丁寧な手書きのお礼状。内定後も継続して社会人訪問。
・居酒屋で突撃社会人訪問をしていたB君。ポイントは「見た目よりも、ちょっと上の役職名で話しかけること」。
・リクナビが有料だと思い込み、登録していなかったC君は部活の先輩ルートで就活。今や、食品会社の若手の営業エース。
・30歳、博士課程修了者D君の就活。過去の研究との別れを覚悟し、今、22歳と一生懸命働いている。

c.私の就活
・電車で見る、死んだ目のスーツ姿の人たちを見て「こうはなるまい」
・就活前に、バックパックという名の中国逃亡
・ダメ就活生。イベント抜けだし、出会ったメンバーと飲み会へ。5名の会社に拾っていただいた。

2.就活

a.就活環境
・法人は200万社以上、就職ナビ掲載2万社、知っているのは100~300社。
・就活生45万人、大手企業の採用枠は3~7万人。
・人気企業は5万人が応募。
・就職難はバランスの問題。求人はある。
・学歴差別、女子差別。就職ナビ掲載の採用実績校よりも、キャリアセンタ―で就職実績を確認する。

b.就活は成長するきっかけだらけ
・異質との出合いに巻き込まれていこう。
・学生特権「叱られる」。転び方を学ぶ。擦り傷が皮膚を強くする。

c.就活関係者の活用法
・就活仲間をつくる。情報共有と生き方議論。孤立とWEBだけ就活の非生産性。
・キャリアセンタ―は、採用担当者と数多く会っている。掛け値なしに皆さんの支援が第一義。
・親、兄弟、バイト先の社員など身近な人が「誰とどのような仕事をしているのか」を把握する。
・先生は人生の先輩。大学教授という仕事を理解してみる。顧客は誰か、目標はあるか。
・内定者の話はあくまで参考程度に。「○○を言ったら(書いたら)採用される」方程式はない。
・就職ナビと就職イベントは広告。企業にとっての自己PR。自己PRのコツを学ぶ。メインナビに加え、自分のお気に入りナビを見つける。
・就職イベント、ぽつんと佇む誰もいない企業が実は優良企業なんてことも。熱心に自分のために時間を割いてくれる。
・みん就、2ch など、無記名情報に振り回されない。
・twitter で採用担当者の人となりが見えることがある。

3.仕事

a.PDC(A)と社会人基礎力
・新人研修で必ず教わるPDC(A)サイクルを就活中に実践する。根っこにある「就活の目的」を履き違えない。ウソついて入社すると、その後しんどい。
・自分の社会人基礎力を定点観測し、アルバイト先や親からの評価ももらってみる。

b.企業が採用するのは仕事ができる人
・面接が上手い人ではなく、仕事ができる人。厳密には、仕事が「できそう」な人。中途:実績、新卒:可能性。
・仕事の成果=能力×やる気。能力は伸ばせる。やる気は風土と相性。
・面接官は、過去の事実で能力の伸びしろをはかり、面接の受け答えでやる気の継続性を推測する。
・あなたの経験は、あなたしか経験していないこと。特に何もやっていなかった、と自信をなくす必要はない。
・求める人物像「コミュニケーション能力」ばかりが目立つのは、仕事の多くがコミュニケーションで成り立つから。コミュニケーションとは、論理と気持ちのキャッチボール。

4.企業

a.企業とは
・企業の第一義は「顧客の課題解決で利益を生みだす」
・納税し、国を通じて医療や教育へ再分配。利益こそ社会貢献。
・利益を増やすには、売上あげるかコストを下げる、の2通りしかない。志望職種はどちらに寄与する仕事か。
・「誰に、何を、どのように」提供して利益をあげているのか=ビジネスモデル

b.志望企業の取引先が言えますか?
・企業と企業の「繋がり」を知る。業界マップではなく、企業つながりマップをつくり、志望企業まで辿りついてみる。寄り道万歳。
・業界内同士はライバル。取引先、仕入先は入社後に直接関わる人たち。知っておいて損はない。

c.個人と企業
・安定は、企業が与えてくれるものではなく、自分でつくるもの。安定のために必要なのは挑戦という矛盾。
・企業選びは買い物じゃない。あなたのために会社があるのではなく、顧客のために会社はある。あなたのためだけに会社があるわけではないが、会社のためだけにあなたも生きるわけではない。
・理念、ビジョンを共有してこそ、一生懸命働ける。

5.扉は開く

a.努力と成果が相関しない
・「頑張っても報われないことがある」それを知り、経験することは、強くなるための通り道。強さとは他人への優しさ、温かさ。
・就活=恋愛論の所以。恋愛充実者は就活に困らないという仮説。終わったことは忘れて次にいくしかない。
・人生で初めて、短期間に「落とされ続ける」そして「理由がわからない」というストレス体験。息抜き上手になる。

b.キャリアは他人のためのもの
・自分だけの幸せは小さいもの。誰かに貢献することが幸せ。
・キャリアは振り返ればできている。目の前のことを一生懸命やるだけ。人生の転機におこなうのはキャリアチェンジであり、アップもダウンもない。
・活躍人材こそ、成果の見えづらい雪かきのような仕事をしている。履歴書には書かれない「手伝いましょうか?」を言える人に仕事が集まる。キャリアが生まれる。

c.扉は開く
・覚悟がすべて。自分で考え、行動し、決める。決めた道を自分で正解にする。
・諦めなければ、扉は開く。

6.推薦本
・『くたばれ!就職氷河期』(常見陽平氏。光文社新書)
・『就活革命』(辻太一朗氏。NHK出版生活新書)
・『<就活>廃止論』(佐藤孝治氏。PHP新書)
・『就活のバカヤロー』(石渡嶺司氏・大沢仁氏。光文社新書)
・『街場のメディア論』(第一講「キャリアは他人のためのもの」)(内田樹氏。光文社新書)
・『できる会社の社是・社訓』(千野信浩氏。新潮新書)
・『腐った翼 JAL消滅への60年』(森功氏。幻冬舎)などビジネスノンフィクション
・『知らないと恥をかく世界の大問題』(池上彰氏。角川新書)
・『父の詫び状』(向田邦子氏)など、きれいな文体の随筆、エッセイ

2010年10月1日金曜日

「リクナビ7つの約束」に思うこと

リクナビが「7つの約束」を発表した。

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●約束1.入社後の活躍を期待できる出会いを創造します。
取り組み内容:リクナビスコア

●約束2.若い人たちが働く機会の拡大、ミスマッチの解消に努めます。
取り組み内容:DREAM-MATCH PROJECT、リクナビNEXT求人紹介

●約束3.学業と両立できる就職活動を実現します。
取り組み内容:イベントの土日祝日開催

●約束4.就職活動にかかる学生の負担を軽減します。
取り組み内容:R-Webinar、就職イベントUstream配信、じゃらん提携、Amazon提携

●約束5.将来を考える学生に、オープンな機会を提供します。
取り組み内容:就職ジャーナル、バーチャル講座キャリアの学校

●約束6.産業界が求める人材像を明らかにし、学生、大学に発信します。
取り組み内容:「求める人材」画面、先輩情報画面、キャリアの学校大学版

●約束7.国を越えた就職・採用活動を促進します。
取り組み内容:中国ハイポテンシャル新卒採用サービス『啓程日本(ケイテイニホン)/Work in Japan』、リクナビ外国人留学生特集

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twitter やブログで目にする限り、今のところ批判先行の様子だが、私の思うことをまとめてみる。

まず、リクナビが約束を宣言したこと、そのことを私は支持する。
宣言したこと自体に意味があると思うからだ。
その意味とは「最大多数の最大幸福を生みだす、日本の就職・採用の仕組みを築いていくうえで、決して無視することができない“リクナビ”のことを皆が論じられる状況になった」こと。ひと言でいえば“リクナビが見えた”のだ。そのビジョンが、その手段が。

私は就職・採用支援会社に8年間勤め、この7月に自分で会社を立ち上げたが、企業の採用担当者・大学職員・キャリアコンサルタント・同業社(採用支援会社)から、しばしばリクナビ批判を耳にすることがあった(そういえば、学生からはほぼ聞いたことがなかった。不満があれば使わなければいいんだもんね)。

私が直接聞いたことがあるリクナビ批判は大体4パターン。

1)リクルートの営業担当者の態度・対応が悪い、または、担当替えが早すぎることに対して「そもそもリクナビは…」という拡大批判
2)商売手法への批判(主に、企業による実勢販売価格差。4,5年前までは「殿様商売」と多くの人が言っていた)
3)元リクの人たちの私的感情による批判(なぜか“愛憎”そして“期待”が入り混じっている人が多い。古巣の悪口を言うって、一般的にはあり得ないことだと思うと、懐が広いのか、熱い人が多いのか。リクルートがリクルートである所以がここに表れている気がする)
4)業界トップなんだからそのやり方は…という業界内からの批判(その時点でビジネスとして負け腰)

直接ではないところだと

5)就職・採用問題の元凶と勝手に思われる、お門違いの批判

というのもある。

「日本最大級の、就職希望者DB・求人DBを保有する、リクナビの就職支援・採用支援ビジネスのあり方」については、実はあまり話題になることはなかったのではないだろうか。せいぜい「エントリーマシンとしての機能って、もう、先がないよね」ということに、リクナビ内外が気付いていながらも、その「次の一手」を誰も生み出せないまま、98年のオープンから12年間が過ぎてきたのではないだろうか。

そして「次の一手」はリクナビをはじめ、就職・採用支援会社各社が単独でつくれるものではなく、大学、官公庁、キャリアコンサルタントらの「より良い就職・採用の仕組みを創る」ことに真剣な人たちが、オープンに議論し、新たな「関係性」を構築することで生まれてくると思うのだ。だからこの「宣言」には意味がある。

そのうえで、私が「7つの約束」の内容について思うこと。

まず、中小企業と未就職者のマッチングや、地方学生の負担問題、海外人材や留学生の就職採用支援も積極的に取り組むという、「ほぼ全方位」をカバーしようとすることの背景には、業界トップとしての責任感もあると信じたい。これほどしんどい景況感のなかで「民間企業ですから、利益重視で○○はやめることにしました」と開き直らなかったことを好意的に受け止めてみようと思う。

一方、取り組み内容については、もっと踏み込んでほしかった。

私の就活問題解決の問いの立て方は「ムダ活(ムダな就活・ムダな採活)を防ぎながら、未知との出会いに、どのように学生を巻き込んでいくか」である。

A)大学生が多すぎる
B)能力・嗜好(力がない、大企業しか志望しない)
C)ムダ活(学歴・男女差別情報の未公表、自己PR・志望動機のつくり方など就活のための就活)

の3点が就活問題の主論点だと考えており、私は

1)学生に「未知=異質」(社会人、他大生、仕事、企業、業界)との出会いを生みだす
2)それによってB)の嗜好について変化をもたらし(「知らない仕事・会社・業界は志望できない」)
3)B)の能力向上にも寄与する企画に学生を巻き込んでいく

ことを「大学」と組んでおこなって(いこうとして)いる。

私自身が講師になるわけでもなく、学内合同企業説明会の業務代行をするわけでもなく、学内での「複数企業パネルディスカッション」を、大学と組んで実施しているのは「ムダ活を防ぎながら、未知との出会いに学生を巻き込んでいく」手段として有効だと考えているからだ。今は「大学」という括りで動いているが、秋以降は「他大生という未知」との出会い企画もつくろうと模索している。

その私の問題意識からすると、今回の宣言と取り組み内容からは「ムダ活を防ぎながら、未知との出会いに、どのように学生を巻き込んでいくのか」が見えないのだ。

どれだけ賢い人たちが、どれほど積み重ねてきたデータであっても、簡易テストで「はい、あなたにはこの仕事・企業が合っています」と言われた会社を応募する学生が、就活を通じて成長するイメージが湧かない。今まで知らなかった仕事、企業、業界に「巻き込まれながら」興味をもち、成長していくイメージが湧かない。

最大級の求人があるからこその、掲載基準、たとえばここ3年間の毎年の採用実績学校名と人数、その男女別、の公表が必須、などの基準や、大学との具体的なタイアップ企画、たとえば複数社乗り入れインターンシップ企画を企業無料・大学有料モデルで提供する代わりに企業には必須で実施してもらうコンテンツ(学生成長に寄与するもの)を用意する、とか、そういう、今までとはちがう具体策が見えてこない。

そこが残念ではあったが、まずは自分が大事だと思っている就活・採活支援に、ひとつずつ取り組んでいこう。民間企業であるリクナビが批判されるべきは、宣言が守られなかった場合だけである。

最後に、私が面識あるリクナビ関係者、リクルートおよびリクルートグループの人材支援会社の社長や事業企画担当者の方々は、とても人間くさくて、驕っておらず、ステキな人たちばかりであることを書き添えておく。