2010年11月23日火曜日

東京大学シンポジウムで改めて考えた、新卒就職問題

11/22、月曜日。

東京大学で行われたシンポジウムに参加。

テーマ「大学教育と職業との接続を考える ~第1回『大学生の就職をめぐる諸問題と当面の打開策』」(主催/日本学術会議、朝日新聞社、東京大学)

南北線「東大前」駅で降りたのだが、安田講堂まで結構、距離があったなぁ。途中でふと不安になって、通りすがりの学生に道を尋ねたら、懇切丁寧に教えてくれた。東大生の印象アップ。そういうもんよね、単純だけど。

開始前に、普段からお世話になっている大学関係者に遭遇。終了後にも別の大学関係者と遭遇。3~400名くらいの入りだった気がするけど、大学関係者が多かったのかな。

プログラムは

・日本学術会議・上智学院理事長、高祖氏の基調講演
・経済評論家、勝間氏の講演
・内閣総理大臣補佐官、寺田氏の講演
・パネルディスカッション

計4時間の長丁場だったが、あっという間だった。

初めて「ナマ勝間さん」を見たのだが、美人オーラが出ていて素敵だった。と twitter でも書いたらすぐにご本人から返信。マメな人なんだな。好感。こんど本読んでみよう。

内容に関しては、勝間さんの歯切れがよく、現場感も理解していて、提言も膝を打つもので、勉強になった。「新卒一括採用から離れることは、ハイリスク・ローリターン」「新卒一括採用は、ローリスク・ミドルリターン」「(人事担当者の本音)企業風土を乱す人は入って欲しくない」「リスクはあっても、学生・人事担当者ともにレールから外れてみる」「どちらもインターンや通年採用を進める」「海外で学ぶのがオプションとして手っ取り早い」「人材にノウハウを貯めることにより、企業が差別化することと合致する」(すべて配布資料より)

シンポジウムを通して、改めて自分が考える「新卒就職」の課題を整理してみた。

1)ムダ活(企業・学生とも「ムダ」な活動をせざるを得ない)

特に学歴問題。企業は、本当は「MARCH以上」などの“実質的な”学歴基準があっても、公表できない。ステークホルダー(特に顧客)への影響を考えるから。営業マンが営業先に「オタクって、早慶ばっかりなんでしょ?」なんて嫌味を言われたら、たまらない。従って「大企業・人気企業への応募集中」により、ムダな活動がお互いに発生する。通るはずがないエントリーシートを学生が必死に徹夜で書く現状は変えなければならない。一方、「実質的な学歴基準はあれど、本当に優秀な人材なら、採用しないこともない」という企業の現実もある。

⇒提案
A)実質的な共通一次(選考)の実施→GPAの普及と連動
B)学生が客観的に自分の立ち位置(レベル)を理解する機会を増やす(セルフスクリーニング)→インターンの拡大
C)企業の「求める人材像」の階層別明示→「主体性」「コミュニケーション能力」の禁止(共通して求められる力はキャリア教育で伝えきる)

2)学生の志向と能力

連綿と続いてきた日本の人材マネジメントと、それによって受けられてきた恩恵を考えれば「大企業に正社員として就職することが、安泰人生キップ」であると学生が思い、大企業に集中する気持ちは理解できる。けれど、それは高度成長を続けた日本の過去の話。安泰を求めて入社希望する人材を企業は必要としていないし(もしろすごいリスク)、正社員解雇(の法制の見直し)も直にやってくると私は思っている。同時に、就職採用もグローバル化が進み続けるなかで「中国人のほうが能力もモチベーションも日本人学生の比じゃない」と多くの採用担当者が思っている。グローバルにまで話をひろげずとも「厳選採用」で「予定数未達」のまま採用を終える企業が多いことを考えれば「企業が求めるレベルの学生がいない」ことは、現実として見なければならない。

⇒提案
D)「仕事(職種)」を知る・学ぶ機会の増加(「仕事(職種)」軸による中小企業への入社意欲の動機づけ)→大学内セミナー、インターンシップ、行政予算付けのWEB
E)自分の志向と能力を知るための、高校~大学期間における短期留学の促進(あるいは予算付けて義務化)

3)ルーザーズゲーム(就活関係者が誰も得をしない構造問題)

今回のシンポジウムでも感じたことだが、アカデミックキャリアの方々と、企業の方々では、会話がかみ合わないことが多い。ここに就職情報会社が絡んでくれば、なおさらだろう。私は企業出身なので、企業の方々の言い分に「そりゃそうだ」と思うことが多かったが、アカデミックの方々は、本当にうまく理解できないのだと思う。けれど、就職問題に関して真剣に取り組んでいる人たちは、会えば、皆、いい人で、状況を改善したいと心から思っている。

⇒提案
F)今回のような、影響力あるシンポジウムの開催(対話と議論)
G)大学、企業、就職採用支援ビジネス関係者、らの先進的取り組みの共有

・・・・・・・

日本特有の「新卒」就職・採用を語るには、経済全体の潮流と、企業の経営戦略の変化、伴って引き起こされる人材マネジメントの変容まで押さえておかないと、本質にまでは辿りつけないとも改めて思った。

単純な話だが、大企業が変わればかなりのことが変わる。

その大企業には、これまでの人材マネジメントによる、「正社員一人ひとりの雇用を守る」重責がある。でも近い将来、人材マネジメントに痛みを伴う「決断」をし、変えなければ企業として立ちいかなくなる日がくる。

私はまずは、大学と組み、企業と組み、「仕事(職種)」を学生が理解するためのファシリテーションを実施していこう。

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