2011年3月8日火曜日

何度も書く。就職問題の優先課題は「時期」ではない。

3/8、火曜日。

商談2社。

1社目に訪問する前に、某大学から「経団連がさらに○○という方針を今月中に出すらしい、と小耳に挟んだのですが、そうなった場合、影響範囲ってどうなると思われますか?」と電話で見解を求められる。

2社目に訪問する前に、別の某大学から「例年実施していた、10月、11月の業界研究セミナーができなくなりそうなので、代替案を企画してもらえませんか?」というメールがくる。

・・・・・・

先日も書いたが、“経団連方針に配慮して”多くの大学が、特定学年を対象とした企業接点のある「就職セミナー」を12月1日以降に後ろ倒しする。一方で、充実した(目標と、自分の考えと行動のある)学生生活への動機付け、仕事理解を通じた職業観の形成などを狙いとする、全学年対象の「キャリアサポートセミナー」を増やそうとしている(私が大学と共催で展開するのは後者)。

当たり前である。

(就職ナビ一斉オープン日も含め)単純に2カ月、就活生と企業との接点が後ろ倒しになると

・大企業偏重志向の加速(社会の仕組みや繋がりの理解不足、B2B企業や中小企業との出会いの減少が予想され、かつ短期間で一斉にエントリーする必要に迫られるため)
・テクニック(内定獲得)重視の就活の加速(不安だけは早期から持ち合わせるのでノウハウ本・WEBに依存するだろうから)
・1月の後期試験への甚大な影響

が起きる。

もちろん、経団連さんも「大企業志向で、テクニックを重視し、一生に一度だからと3年生の後期試験は“捨て”る学生」を生み出したくて、諸々の方針を出されているわけではないと思う。

ただ、引っかかるのは、その「小耳に挟んだ情報」によると、「学生とのあらゆる接点を12月まで持たないように」という方針を出すという噂である。それが本当ならば、経団連方針に配慮する一方で、学生一人ひとりに意義あるキャリアサポートを実施しようとしている大学に協力するな、って解釈でよろしいのかしら。

実際に、私が企業に提案している、春の学内セミナー(全学年対象のキャリアサポートセミナー)についても

・「特定大学」という点で方針に抵触するおそれがあるため参加不可
・他の企業がキャリアサポートセミナーをどう捉えるか(方針に抵触しないか)まだ様子見をしたいので参加不可

という企業は既に出ている。それは各社の判断なので、私がどうこう言う立場にない。

ただ、経団連さんが「あらゆる(キャリアサポートセミナー等も含めて)学生接点をもたないように」という方針を本当に出すのだとしたら、「学生のことを考えていない」としか今の私には思えない。

就職問題の優先課題は「時期」ではない。

相対的な「企業にとっての魅力人材」を構造的にどのように輩出するか、である。

では「企業にとっての魅力人材」はどのように輩出されるか。「充実した学生生活(学業なり、部活なり、学生団体なり)」によってである。自分で考え、行動し、責任をもって何かを決める経験、「やりたいこと」だけではなく「すべきこと」にも取組み、もがき、苦しみ、喜び、「やりきる」経験である。

では「充実した学生生活」への動機付けはどのようにおこなうのか。

私は著名人の講演でも、アカデミックなキャリア論でも人生観でもなく、一人ひとりの等身大の社会人による話、そこから滲み出てくる何か、言ってみれば言霊のようなもの、だと考えているのである。一人ひとりの社会人の言霊を通じて、職種(仕事)を知り、企業の繋がりや社会の仕組みを知り、生きることについて考えることが、今、ここにいる自分が、これからの学生生活にどう取り組んでいくか、を考える意義ある場になると私は考えている。そこには、多くの人が属し、多くの人が属していく「企業」の協力が欠かせない。

ちなみに、企業(社会人)の話を聞くことは、就活の早期化を招かない。逆である。「早い段階からの就活が大事だと分かりました!」なんてことを書く学生はいない。「就活が大事なのではなく、一日一日の自分の過ごし方が大事なんですね」と低学年の学生ほど気づくし「明日から目標ある生活をおくります」と嬉しいアンケートを書いてくれる。

噂レベルの話なのに勝手に怒ってしまったが、学生不在、「早期化是正」という「誤った課題設定から導かれる不幸スパイラル」が大きくならないことを祈るばかりである。

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